東京都立大学には社会人向けのオープンユニバーシティという公開講座があるのですが、その今年度の冬季講座のプログラムの中で、師匠である東京都立大学の角田誠教授にお声がけいただき、一緒に1月18日から2月8日にかけて、連続講座の講師を努めさせていただくことになりました。講座の内容は以下の通りです。公共施設が、利用者ニーズの変化、建物の老朽化などによって、社会的な機能を満足せずに陳腐化しています。新しい施設を作ろうといっても、そこまでの資金はありません。今までの施設を解体し建て替えるのではなく、その利用方法を変えながら使い続けることは、SDGsの目指すべき方向性と捉え、研究面・実践面から公共施設の利活用の方策を一緒に考えてみましょう。4回にわたる講義のうち、1,4回目が角田先生の担当で、2,3回目を私奥村が担当させていただきます。文化財の保存と利活用をおこなった港区立伝統文化交流館や、習志野市でのPFI事業による公共施設再生など、前職において設計・監理を担当させていただいた実例を中心に、これからの公共建築の活用方法などを、実際に実務に携わった者の目線から事業全体の流れや苦労話、また計画の勘所などを講義を通じてお話をさせていただきます。プログラムの発表のギリギリまで、大学側では講義の方式を検討していましたが、コロナ禍第3派などの現在の社会状況を鑑み、苦渋の決断でオンラインによる開催となりました。お話しをお受けした当初は、冬季講座が開催される頃には対面になるのではとの話しもあり、私はそれを楽しみにしていただけに、これは非常に残念ですが、視聴しやすさはあるのかなとも思っています。ちなみに、仕事でご一緒させていただきました行政の方からすぐにご連絡があり、庁内の調整ができればご参加いただけるとのことでした。嬉しい限りです。みなさま、どなたさまも参加可能ですので、ぜひともご参加いただけると幸いです。お声がけいただきました角田先生と母校に心より感謝申しあげます。 https://www.ou.tmu.ac.jp/web/course/detail/2041G003/
2020年12月3日、千葉工業大学の創造工学部建築学科の田島則行先生にお声がけいただき、田島研究室のゼミにおいて、学生さんの卒業設計と修士設計の指導をおこなわせていただきました。ゼミはオンラインではなく、対面での指導を依頼されましたので、習志野市の津田沼にある千葉工業大学に足を運びました。今年度初めて学生さんとの対面となりました。初めて千葉工業大学を訪れたのですが、建築学科のある1号館は20階建ての高層ビルで、とても綺麗な建物で驚きました。1号館だけなく、キャンパス全体がとても綺麗で、私のイメージしていた工業大学の雰囲気ではありませんでした。 広い部屋で3密を避けつつ、各自マスクをつけたままでゼミを進めたのですが、提出が近づいていることから、学生のみなさんは真剣な眼差しで課題に取り組まれており、そのような雰囲気の中でゼミは進みました。リノベーションに精通する建築家の田島先生の研究室であることからも、ゼミ生の半数近くがリノベーションに関する提案でした。一人一人の真剣な発表に対して、私もその熱量に答えるべく、真摯に対応させていただきました。ゼミの最後に、学生最後の設計ですので楽しみながら悔いのないように取り組んでもらいたい旨を伝えました。アウトプットには生みの苦しみがありますよね。今年度は多くの大学でオンラインでの講義をさせていただきましたが、やっぱり、対面がいいですね。ゼミでの指導を通じて、楽しい時間を過ごさせていただくと同時に、みなさんから元気をもらいました。お声がけいただいた田島先生には、このような機会をいただき、改めて、感謝を申し上げます。また、田島先生の都市再生に関する博士論文を拝受しましたので、しっかりと勉強をさせていただきます。サインをいただくと嬉しいですね。サインをいただくのは、東大の加藤耕一先生から私のバイブルである「時がつくる建築」にサインをいただいた以来です。また、今後の活動についても、お話させていただきました。これから、いろいろなことを田島先生とご一緒できれば嬉しいです。 それと、建築学科のある1号館の1階に、フォードの30年代のタイプAが飾ってありました。卒業生である自動車部OBで名誉教授からの寄贈とのことで、千葉工業大学の歴史を感じました。
2020年12月1日、建設通信新聞に当社のコンペ当選に関する記事が掲載されました。関西版のトップ記事として大きく紙面が割かれています。メディアの媒体を通じて、みなさまにコンペ当選のお知らせをさせていただけることは大変ありがたく、同時に、気が引き締まる思いです。設計事務所の方、施工会社の方、後輩などから、新聞を見たよという連絡をたくさんいただきました。フェイスブックでのお祝いの言葉も含めて、大変ありがたい限りです。ちなみに、ネットのニュースにはその他の機関からも報道されているようです。みなさま、今後とも、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。ただ、見出しがとても大きな文字で「奥村誠一コンソーシアムに」となっており、否、とてもありがたいことなのですが、コンソーシアム(共同事業帯)の意味を知らない人にこの見出しで通じるのかなと思ったりしました。(奥村が何かに変身しそうな印象を受けないかなど。)もう少し文字を小さくしても、「奥村誠一コンソーシアムを優先交渉権者に特定」とか、せめて「奥村誠一コンソーシアムに特定」だと分かりやすい気がしますが、どうなのでしょうか。
当社において、初の官公庁業務の仕事となります。事務所の創業から初年度で、代表企業として、官公庁の業務を受注できるとは考えてもいませんでしたが、挑戦する気持ちを忘れずに取り組んだことが、結果に結びついたと思っています。関東を飛び出し、大阪でのプロジェクトが始動します。コンソーシアム(共同事業体)のチームアップについては、素晴らしい協力事務所さまのお力添えがありました。改めて、感謝を申し上げます。現在、進行中のプロジェクトもしっかり推進しつつ、本業務である9000平米の大東市庁舎の再整備に向けて、全力で取り組んでまいります。みなさま、今後とも、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。 http://www.city.daito.lg.jp/kakukakaranoosirase/seisakusushin/gyoseisabisukojositu/shinchosyaseibi/gijyutsutekishien/1606266686714.html
11月5日、千葉工業大学の田島則行先生にお声がけいただき、学部2年生の建築計画1という授業において、zoomを使用したオンラインによる特別講義をさせていただきました。ご依頼を受けた当初は、対面方式かオンライン方式かは、講義の直前まで確定できず、状況に応じての判断とお聞きしていましたが、やはり、社会情勢を鑑み、オンライン形式での授業となりました。先生や田島研究室の大学院の学生さんなどを含め、150名もの参加をいただきました。これだけ多くの方の前での大学での講義は初めてでしたが、画面に向かっての講義でしたので、講義に対する心持ちは人数による影響はなく、自然体で講義を進めることができました。 田島先生との事前の打ち合わせでは、講義後、学生さんからの質疑はあまり出ないのではないかと言われていましたが、学生さんの建築再生に関する関心は高く、活発な議論をおこない、楽しい時間を過ごすことができました。質疑応答の内容を大別すると、以下の3点になります。 1)建築再生計画を進めるためには、構法の選定や施工の方法など、知っておいた方がよいことは何か。また、これらは設計の実務を通じて知り得たのか、さらに、学生の時に勉強しておいた方がよいことはあるか、ということでした。私が学生の時には、考えも及ばなかったことですが、前職において、師匠である青木茂先生に日頃から言われていたことを伝えました。とにかく、知識と技術を多く習得し、多様な状況に応じて手が打てるようにすることが重要であると伝えました。裏打ちされた経験も重要となりますが、とにかく、目前の学びと、多くのことに興味をもって、アンテナを張ることが大切であるともお伝えしました。自らも、日々、勉強しなければならないと思って、青木先生からの言葉を胸に活動をしています。 2)建物の計画的にも構造的にも不要な部分を解体し、構造躯体のみにした際に、対応が難しかったことは何かという質問がありました。解体しなければ既存躯体の経年劣化や前施工不良などの不確定要素に対する対応の方法について、知りたいとのことでした。これは、建物に応じて異なる状況ですが、毎回、向き合う建物ごとに、いつも、対応が難しいことばかりであるとお伝えしました。これらも、ひとつひとつ、真摯に向き合いながら、解決の方法を探るしかないのですが、一定の経験から予測可能な部分は増えてくることもあり、これらを工事着手前に、如何に整理できるかが、工事着手後にトラブルが起きないための準備となります。 3)設計の前におこなう調査などにおいて、苦労したことは何かという質問もありました。法規的に正面突破をするためには、法律と正面から向き合わなければならないのですが、現行法規だけではなく、建設当時の法規の確認をしなければならず、整理に時間がかかります。また、法に対する行政の解釈も特定行政庁ごとに見解が異なることもあり、また、建築再生に関しての法的な手続きをおこなったことがないという行政庁の方との見解のまとめや調整なども必要となる場合もあります。建築再生に関するの関係法令をしっかりと把握・理解しておく必要があるというのが実感であることをお伝えしました。設計前の調査などが建築再生の肝となる部分と感じています。 今回の講義でも、学生さんがこの講義をどのように捉えて、どのように感じたのかのレポートを後日、拝見させていただきたい旨をお伝えしております。適切な講義ができたかどうかの不安もありますが、それも含めて、レポートを楽しみにしています。建築再生設計の実務をおこないながらも、改めて、このような貴重な機会をいただいた田島則行先生と千葉工業大学には、この場を借りて、改めて、感謝とお礼を申し上げます。 それと、先日、田島先生が博士の学位を東京大学で取得されたことをお聞きしておりました。私も設計の実務をおこないながら、2足のわらじを履いて、博士の学位取得をさせていただきましたが、田島先生は、設計の実務と大学での教務を行いながら、学位を取得されております。3足のわらじをはきながらの学位取得であり、それは、想像もできないほどに、ご苦労があったのではと拝察いたします。改めて、この場を借りて、敬意を表します。
10月20日、武蔵野美術大学の源愛日児先生にお声がけいただき、大学院1年生の建築構法特論という授業において、zoomを使用したオンラインによる特別講義をさせていただきました。武蔵野美術大学は、多摩美術大学と並ぶ日本における私立美術系大学の双璧をなす大学です。先月、大学にて源先生と特別講義の事前の打ち合わせをおこない、さらに、先週、zoomによるオンラインの最終打ち合わせをさせていただきました。美術大学の雰囲気は私が通った総合大学とはまた違ったアートwの雰囲気がありました(学園ドラマ(芸術系)の一風景のように、学生さんが凧揚げを楽しんでいました。9月でしたけど。何かいい。)。建築の仕組みや構成を学ぶ建築構法の授業ではありますが、美術大学ですので、時間をどのようにデザインするかについての問題意識を共有した上で、本日は講義を行いました。 講義後、学生さんと質疑応答をおこないましたが、美術大学の学生さんらしく、遠慮がちながらも、建築再生における確信を突く鋭い質疑を受けました。質疑応答の内容を大別すると、以下の3点になります。 1点目は、リノベーションは綺麗にするだけという印象であったが、耐震補強という極めて語彙が限られる中において、普段から設計者としてどのような思いで建築を設計しているかを聞きたいとのことでした。既存建物の再生を設計することの条件として、机上でデザインを巡らすのではなく、今ある建物が現前として存在し、建物の形態(ボリューム)がある中で、耐震補強や法的制約を受けながらその条件整理をおこない、再生可能性の検討をおこないながら、少しづつ、事業者の要望する計画が導き出されて最終的なカタチが集約され、形成していくことが再生設計の難しさであり、また、その絡み合った糸の紐解きが面白さでもあることを伝えました。特に、設計をおこなう前の「予備調査」の重要性を伝えました。 2点目は、建築の再生を設計をすることで、建築家としての作家性はどのように盛り込むのか。建築の再生においては、それを打ち出すことは難しいと思うがどのように考えているかという質疑がありました。美術大学の学生らしい質問です。役所や学校、あるいは病院の耐震補強には、鉄骨のバッテン補強を唐突に外部に取り付けるといった、明らかな補強然とした施工がなされており、都市景観上も望ましくないと考えています。耐震補強という、現代における建物の性能向上には受け入れなければならない事象に対して、どのようにアジャストするかということに建築の作家性は現れてくると考えています。そのことを踏まえた上で、さらに、既存建物が経験した時間の経過、すなわち、エイジングされている部材やその歴史性をもった部位や空間に対して、それを活かしながら整備することに作家性は表出するとも考えています。都市やまちは、歴史の重層により文化が紡がれていくものであり、奇抜な新規性のある意匠を生み出すことが、これからの日本における縮小社会において作家性を打ち出すこと、すなわち、建築家の役割ではないと考えています。 3点めは、仮に、建て替えをおこなう場合、今後、数十年経過した後に、再生しやすいデザインということを考慮しながら設計をすることなどはあるのかという質問でした。これは、重要な課題です。建築再生設計事務所として再生「する」設計と、建て替えざるをえない場合おいては、新築においても再生「しやすい」設計の二つを念頭に置いて設計を行なっています。構造躯体と設備・意匠を分離して役割を担うといった理念に基づく考え方は、大阪ガスが事業主体となり、私が建築再生に関する博士の学位を取得した時の主査である師匠の師匠のまた師匠である内田祥哉先生が中心となって計画したNEXT21という実験住宅で既に示されたように、重要な考え方だと認識しています。驚くことに、この建物は、私が大学で建築を学び始めた1994年には既に建設されており、未来、すなわち、今からの日本の建築の在り方を導く建物と建築構法の考え方です。建物の寿命は、構造躯体はまだまだ長寿命化が図れるにも関わらず、設備劣化や仕上げの陳腐化などの再生すれば改善可能な要因により建物の寿命が決まることが多く、それでも、建物をどうしても建て替えなければならない場合は、数十年後の改修を見越して設計する必要があると考えています。 今回の講義では、学生さんがこの講義をどのように捉えて、どのように感じたのかのレポートを後日、受け取ることになっています。適切な講義ができたかどうかの不安もありますが、それも含めて、レポートを楽しみにしています。建築再生設計の実務をおこないながらも、改めて、このような貴重な機会をいただいた源先生と武蔵野美術大学には、この場を借りて、改めて、感謝とお礼を申し上げます。今後とも、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。 後日、学生さんからのレポートを受け取りました。 今回は建築構法の講義であったため、外付け耐震補強と外装改修の各部の構法について詳細に説明をおこないましたが、1つのディテールが耐震性・耐久性・耐候性・断熱性・意匠性の複合的な性能向上に寄与することに着目した方が多く、建築設計と建築構法の密接な関係を感じつつ、過去と未来を見据えた時間のデザインが、これからの設計者の技量としてみられるのではないかとのことでした。 新築とはまた違った設計の楽しさが感じられて、自身も将来的に建築再生に携わってみたいとの意見を複数聞くことができたことは、私としては大変嬉しく、今回の講義の意義があったのではと感じました。
前職、青木茂建築工房在籍時の最後の担当作品として携わらせていただいた港区立伝統文化交流館が、2020年度のグッドデザイン賞を受賞しました。前職のスタッフの方にお知らせをいただいたのですが、建物の詳細は添付のグッドデザイン賞のホームページに記載されているとおりです。延べ床が約550平方メートルの2階建ての、公共施設としては比較的小さな建物でしたが、コンペによる設計者特定などから数えると、約5年がかりの大プロジェクトでした。文化財の再生の設計をさせていただくことは初めてで、保存と利活用の両立の難しさを学びました。 コンペ提案のための各種の分析や準備には、設定された短い期間の中で、凝縮してまとめることができたと思いますが、この時は、ここまで大変なプロジェクトになるとは思っていませんでした。 文化財として建物を保存したいという考え方と、利活用するために文化財にも関わらず改造を加えたいという考え方との狭間におけるトレードオフの関係に対する、都度の決断には相当の検討と時間をかけたことなど、設計時の協力事務所や専門業者、および、港区関係者との幾度となく続けた協議や議論を昨日のことのように思い出します。 さらに、施工時において、設計時に分からない不確定要素についての対応や、設計時よりもさらに議論を繰り返して保存する部分をできる限り増やしたいという文化財係を中心とした港区担当者の歴史や文化に対する認識、港区監督員の安全・安心を確保して誰もが利用しやすい建物にするという強い思いなど、建築に対する問題意識を共有させていただくことができました。 関係する全てのみなさまに感謝を申し上げるとともに、これらの経験を今後の設計活動に活かしていきたいと考えています。 https://www.g-mark.org/award/describe/50995?token=6BLFRs6vam
8月21日、母校の3年生の設計課題の講評会に参加しました。学生の皆さんに設計主旨や動線計画を確認しつつ、教育的立場で講評をさせていただきました。講評会の最後に、設計に取り組む際は、周辺環境との関係やその土地・建物の持つ歴史などを踏まえた計画であってほしいと総評しましたが、果たして、自らが学部3年生の時に、これらをどれだけ思考していたのか疑問に思い、学生時代のポートフォリオを開いてみました。恥ずかしながら、学部3年生の時の設計課題を投稿します。 課題は「ショールームを持つオフィスビル」だったようです。 設計のコンセプトが小さく書いていました。 GLASS OFFICE ショールームを持つオフィスビルの計画である。空間は、6mの三次元グリッドで構成されている。36m×36m×36mのガラスの立方体の中に、12m×12m×36mのヴォイドが存在している。南立面にはショールームで行われる展示の内容を表す12m×12mのスクリーンが浮かび上がる。 抽象的で白銀比を使った形態操作を主眼においたコンセプトのようです。建築家であり、大学院時代の師匠である小川晋一先生の影響を存分に受けています。ダイアグラムがコンセプチュアルですが、よく見ると、表現したいことは読み取れそうです。CADとCGを使いたてで、使えることに満足していたのかもしれません。周辺環境や土地の歴史性に関連する記述はないようです。あまり、学生の皆さんに偉そうなことは言えないことが判明しました。 白黒反転の配置図を見ると(外構・造園計画がない。。)、日本銀行福岡支店の西側の敷地でした。当時、何かが建っていたかは思い出せませんが、日銀の敷地のようにも読み取れます。現在の状況を調べたところ、既存の日本銀行福岡支店は1941年に建設された、戦後初めての鉄筋コンクリート造のルネッサンス様式の建物で、現存する日本銀行の支店の中でも福岡支店は最も古い建物とのことです。これを解体して新しい支店が建設されるとのことで、事業継続のために建物を半分づつ建設しつつ、博多駅前にある西日本シティ銀行と同様に、なんと、既存建物は解体されるとのことでした。新たに建設される建物は、景観や土地・建物の歴史に配慮した計画ですが、重厚な歴史ある既存建物が活用されずに解体されることは、非常に残念です。 当時、学生自分なりに思考したのだと思いますが、この地には見合わない、色々と検討の余地ありの成果物でした。しかしながら、今みても、自らの趣向が分かる、意匠的には嫌いではない計画でした。今の知識や技術をもって、同じ課題に取り組むならば、既存の日本銀行福岡支店を免震補強をしながら大規模改修をして外観を活かしつつ、必要面積を確保するために、増築を行うと思います。増築部分は、文化財的価値のある既存建物との明確な違いを保ちつつも、調和を図る計画とするのではと思いを巡らしています。 以上、振り返りでした。ありがとうございます。 日本銀行福岡支店の建替えについて https://www3.boj.or.jp/fukuoka/tatekae.html
学生時代の師匠である建築家の小川晋一先生にお声がけいただき、8月21日、母校である近畿大学において、建築再生に関する講義と3年生の集合住宅の設計課題の講評会に参加をさせていただきました。4年生や先生方を含めて100名以上の参加をいただいた、zoomを使用してのオンライン講義となりました。 講義前に久しぶりに近大の先生方とお話をさせていただき、なつかしい気持ちと、改めて、気を引き締めなければならないと感じながら、誇らしい気持ちで講義をさせていただきました。しかしながら、学生時代にご教授いただいた先生方の前での講義は気恥ずかしさもありました。私の後輩にあたる建築家の非常勤の先生方ともいろいろなお話をさせていただき、これまでの時の経過と、これからの未来について語り合うことができましたが、先日独立した身としては、みなさんが先輩となります。(これからよろしくお願いいたします!) 特別講義については、内容を詰め込みすぎていたことなど、学生のみなさんにはやや難解な部分もあったかと思いますが、少しでも建築再生に対する気づきになればと思いながら、私の思いを後輩に伝えるべく、本日、楽しく講義をさせていただきました。設計課題の講評会では、日頃の実務で向き合うコスト・構造・法律などの制約条件に縛られた、ギリギリの設計業務から少し視点を変えて、学生さんの自由な発想の提案を拝見し、多くの気づきのある時間を過ごさせていただき、建築は楽しいものだということを改めて再認識しました。学生の皆さんの提案は、計画的には詳細が煮詰まっていないことや、やや、一部、整理が不足しているような発表もありましたが、コストに囚われない自由な発想は大変刺激になりました。(1点だけ言いたいことがあるとすれば、、図面に階段は描こう。笑) それともう1点、大高正人設計の広島を代表する高層アパートに隣接する敷地において、リバーサイドである配置だけではなく、周辺環境との関係やその土地のもつ歴史などを踏まえた計画であってほしいとも感じました。私の3年生の時の設計課題は、既存建物の解体を前提とした、事務所ビルを計画せよというプログラムでした。その当時は、その敷地に建つミニマルでユニバーサルなスペースを獲得するための経済性に富んだ提案をしたのですが、今思えば、元々ある建物をなぜ解体するのか、その理由は何か、理由があるとしてそこに建つべき建物は何がふさわしいのかなど、課題に対するアイロニカルな視点も取り入れて提案をしてもよかったと今は思っています。既存建物を解体することに何の抵抗もありませんでした。これは高度経済成長のなごりでもあったかと思います。 講義後の質疑において、いつから、建築の再生について意識し始めたか、という問いがありました。自らが学生の時は、いかに、魅力的なロジカルで意匠性の高いミニマル建築を提案できるかを考えていたのですが(学生にありがち)、設計の実務をおこなうようになって、青木茂先生に出会ってから考えが変わりました。斬新な建築を設計して欲しいと言う要望よりも、今保有している建物や土地をどのように活かすことができるかというクライアントの問いに対して、一つ一つ回答を積み上げ、建築再生のメリットを伝えていき、建て替えではない案を提示していきました。私の故郷である北九州市は官営八幡製鉄所が1901年に創業し、鉄の町として早くから栄えたのですが、それが原因で、公害発生やバブル経済の崩壊で、これまた早くから街の衰退が起こりました。衰退した街の様子しか知らない私としては、地方都市である我が街をなんとかしたいという思いが、ずっと、心の中にありました。今では、北九州市は環境モデル都市として、日本に先駆けて環境問題に取り組む都市として、SDGs未来都市に選定されています。各位の頑張りが結実した結果だと思っています。 新日鐵(小さい頃はそう呼んでいました。)が創業して100年後に私は設計の実務を始めて、さらに、その20年後に、建築の再生を設計する事務所を創業しました。建物が何らかの理由で解体されると、そこにどのような建物があったかは思い出せなくなります。色や形や、しばらくすると用途も忘れてしまいます。どのようなカタチであれ、建物を再利用して活かすことで、建物の記憶が引き継がれ、その積み重ねにより都市は成熟して文化的な街が形成されるのではないかと今は考えています。建築は時代の要請に応じて建設されます。少子高齢化社会の中でウィズコロナでありながら、どのような建築を生み出していくべきか、また、生み出さざるべきかをよく考えて、今回の講義を通じて考えたことを、実務に活かしていきたいと思います。 小川晋一先生を始めてとして、この度の講義に関わっていただいた皆さまに感謝とお礼を申し上げます。ありがとうございました。
8月11日、明海大学において、不動産学研究という授業の中で建築再生に関する講義をさせていただきました。teamsを使用したオンライン講義となりした。私は設計を生業とする実務家ではあるのですが、東京都立大学の角田誠教授にお声がけいただき、日本建築学会の建築計画委員会各部構法計画小委員会の委員を10年ほど努めさせていただいています。その委員の一員である明海大学の前島彩子准教授にお声がけいただき、この度、明海大学で講義をさせていただくことになりました。 明海大学では、日本で唯一の不動産学部を有し、金融学、経済学、法学、工学といった、これまで個別に研究されてきた学問を総合的に不動産学を学ぶことができます。以前、ある行政における委員会にお声がけいただき、明海大学の周藤利一教授に私の講演を拝聴いただいたことがあるのですが、その際、意見交換をさせていただいたことがありました。独立後に独立のご報告をした際、また、何かの機会でご一緒できればとの応援をいただいておりました。この度の明海大学での講義にて、講義を拝聴いただき、また、前回よりもより深い意見交換をさせていただいたことについては、感慨深く、嬉しい気持ちになりました。 講義の冒頭に、非住宅系の建物の再生プロセスの説明をおこなった後、本講義では、住宅系に関する説明を中心に行いました。不動産学部は、学部名の通り、不動産を中心とした学部であることから、建築や不動産に関する多分野にわたる専門の先生方が在籍されており、今回の講義にもご参加いただいたことで、特に、共同住宅の再生に関する法手続きや、金融に関する活発な意見交換をさせていただくことができ、私も多くの学びがありました。 今回の講義では、学部の多くの先生方が参加されての講義となりましたが、講義後のメールにて、前島先生からは、先生方からの評価をいただいているとお聞きし、不動産学の研究においても、建築の再生に関する関心の高さを感じました。近日、再開するであろう、建築学会の委員会にて、学生のみなさんの感想や、前島先生のご意見などをお聞きできればと楽しみにしています。 本講義では、不動産学研究という科目の特徴を踏まえ、意匠や設計の考え方というよりは、建築基準法第86条、すなわち、既存建築物の制限の緩和に関する条文を中心とした建築再生に関連する法律や、融資・ローンなどの金融的な話を中心としたため、学生の皆さんにはやや難解であったかもしれませんが、不動産を扱う上では切っても切れない検討事項ですので、建築再生に関するそれらの事項に関する課題を少しでも受け止めていただき、今後の活動に活かしていただけると幸いです。 オンラインでの講義ではありましたが、本講義後の質疑応答や意見交換などは、学生のみなさんや先生方の顔や表情を見ながらのやりとりとなり、先生方からは多くの貴重な示唆を頂戴するなど、楽しく議論をさせていただくことができました。 多様な質疑や意見交換でなされた議論は以下の5点などでした。1)駅から離れた場所に位置する、再生された建物の家賃変動について2)建築再生の一般化の進まない要因として、中古市場の活性化トータルプランは国交省でも展開しているが、一般化しているとは言えない状況にあると考える。一般の方の意識の変化と、柔軟に対応する設計者の技術力の向上が必要であることについて、建物を解体して更地前提での売買や、ほぼ、土地を担保として金融機関から融資を受けるのではなく、既存建物を再利用することを前提とした計画による建築再生の一般化の促進はどのように進めていくべきか3)地震国である我が国において、耐震補強を行うことは重要である。このことと、遵法性を確保することは、建物の再生において、最も重要な要素であり、それを前提にしなければ、市場流通やファンド化、外資系企業への売買などはできない。4)税法上の耐用年数が経過した建物に対する再生工事の融資を受けることについて5)アフターコロナやウィズコロナを考えると、大規模な積層された床が構築される再開発や、自然換気を伴わないオフィスビルなどは見直していくべきであり、これらのことを考慮しながらも、建築の再生をおこなうことで、環境にも優しく、循環型社会の形成に寄与するのではないか。など、私の講義を飛び越えて、意見交換や議論がとても白熱したものとなりました。笑。 周藤先生から重要な示唆をいただいたこととしては、建築基準法で網羅しているのは建築計画を進める上での総論であり、個別の計画については設計者に委ねられているということでした。まさに、日頃から私の考えていることを法律の研究をされている先生から言われて、何か腑に落ちた気持ちになりました。前職において青木茂先生が進めていた建物があと何年もつのかという社会の問いに対して、日本建築センターが建物の税法上の耐用年数に捉われない、物理的な耐用年数を定量的に評価することをプレス発表したことにより、ますます建築再生の一般化が促進するのではないかと期待しています。やや、長文となりましたが、このような貴重な機会をいただいた前島先生には、この場を借りて、改めて、感謝とお礼を申し上げます。