今年度、2022年4月1日より、都内にある私立大学に、専任の准教授として着任することとなりました。新宿駅前にある大学で、正式な着任先は、文化学園大学 造形学部 建築・インテリア学科になります。 授業は4月から受け持ちますが、プレゼミとして今年度の後期から3年生のゼミ生を受け持ち、正式に4年生の卒業設計のゼミ生を受け持つのは、再来年度の2023年からとなります。建築再生ゼミを開くことになる予定です。 着任した大学では、建築再生やリフォームの業界に進む学生が多くなっているようで、かつ、建築再生における実務者(そもそも実務者)が大学の教員にあまりいないことと合わせて、学科の方針にも合致したことから、私が着任に至ったとお聞きしています。 学生時代には設計や意匠のことばかりを考えておりましたが、実務に携わったことにより、建築における構造・耐震の重要性を、また、意匠と構造・設備との融合を、既存部分と再生部分の取り合いの難しさを、今となっては、肌身に染みて感じております。これらのことは、私が建築構法や建築生産、特に耐震改修をともなう建築再生の研究に興味を持ち、それらについての視野を大きく広げる契機となりました。 これまで、私は、青木茂先生のもとで2000年から2020年までの20年、そして、独立後の2年間、実務者として既存建物の再生設計に携わってきましたが、首都大学東京(現東京都立大学)にて耐震改修をともなう建築再生の研究をしながら、建築学の博士の学位を取らせていただいたことや、それ以降に東京大学や母校など、いろいろな大学で特別講義や非常勤講師として、講義や設計の指導をさせていただいたことなどが、設計実務とは異なる、研究・教育、社会活動に大きく目を向けることとなるきっかけとなり、今回、大学での専任教員としてのキャリアをスタートさせることになったと考えております。 約20年前、青木先生が、建築を再生させることを建築学の一つの分野として、大学という教育機関で確立させたいと言われていたことを、今でもはっきりと覚えています。青木先生の意思を少しでも引き継ぐことができれば、少しは、青木先生に対して恩返しになるのではと思っています(面と向かっては、恥ずかしくて言えませんが)。 また、今年度は、東京都立大学で再生設計デザイン、武蔵野美術大学と同大学院で建築構法と建築構法特論、東京工芸大学大学院で木構法特論、国土交通大学校で建築再生計画の非常勤講師も併せて務めさせていただきます。 これからは、実務者としてだけではなく、建築再生の設計実務のできる教育者・研究者としても、尽力していく所存です。これからも、みなさまにご教授を賜ることがあるかと存じますが、何とぞ、ご指導いただけるとありがたいです。 これもひとえにみなさまのおかげだと思っています。このことは、私にとって、大きな挑戦となります。恩師をはじめとする、全てのみなさまとのご縁に深く感謝いたします。今後とも、引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
3月22日、日本建築学会の拠点である建築会館で行われていた、内田祥哉追悼展実行委員会と日本建築学会が主催する、内田祥哉追悼展を観に行きました。最終日の滑り込みとなりましたが、実行委員長である深尾精一先生がいらっしゃったのでご挨拶をさせていただいた後、展示をじっくりと拝見しました。(なぜか、いつも、展示は最終日に滑り込んでいるような気がする。) 私の大学院博士課程での恩師角田誠先生の恩師である深尾先生の、さらに恩師である内田先生は、私の研究テーマである建築再生の分野を包含する、建築構法という建築の仕組みを学問として体系化させた、雲の上の存在です(私奥村は、ひ孫弟子ということでよいですか。ダメですか。そうですか。。)。 思い返すと、1994年の私が学部1年生の時に、内田先生の著書である「建築構法」を手にとり、教科書として使用していました。あれから28年経った現在、武蔵野美術大学で建築構法の授業を教えているのですが、どのように学生さんに教えるべきかなど、基本に立ち返る時には、今でも、内田先生の「建築構法」を手にとり、学び直すこともあります。(1994年!) この追悼展では、教育者や研究者としての、とてつもない成果の展示だけではなく、内田先生の学生時代のノートや、逓信省在籍時に設計された作品、さらには、AR(拡張現実)を用いた作品やご自宅の書斎の鑑賞など、コンパクトな展示空間の中での多彩な内容が展示されていました。 一つ一つの展示の感想は尽きませんが、最も印象的だったのは、内田先生の弟子たち(といっても、建築界の錚々たる方々)が、内田先生からかけられた言葉を展示したコーナーでした。社会は多様化して複雑に絡み合っていますが、だからこそ、物事はシンプルに考えなければならいなあと思いました。明確なのにウィットに富んだ、暖かく優しいことばだなあと、どれを見てもそのように思いました。展示されていた印象的な「内田先生のことば」を投稿させていただきます。私も建築構法を研究するものの端くれとして、諸先生方が積み重ねられた成果に少しでも上積みできるように精進したいと思います。 また、先日、東京大学の権藤智之先生から、権藤先生が編著をされている「内田祥哉は語る」を謹呈いただきました。持ち歩いて読んでいるところですが、改めて、じっくり内田先生の語りを胸に刻もうと思います。 2021年5月3日に96歳で永眠された内田祥哉先生のご冥福を心からお祈りいたします。