8月21日、母校の3年生の設計課題の講評会に参加しました。学生の皆さんに設計主旨や動線計画を確認しつつ、教育的立場で講評をさせていただきました。講評会の最後に、設計に取り組む際は、周辺環境との関係やその土地・建物の持つ歴史などを踏まえた計画であってほしいと総評しましたが、果たして、自らが学部3年生の時に、これらをどれだけ思考していたのか疑問に思い、学生時代のポートフォリオを開いてみました。恥ずかしながら、学部3年生の時の設計課題を投稿します。 課題は「ショールームを持つオフィスビル」だったようです。 設計のコンセプトが小さく書いていました。 GLASS OFFICE ショールームを持つオフィスビルの計画である。空間は、6mの三次元グリッドで構成されている。36m×36m×36mのガラスの立方体の中に、12m×12m×36mのヴォイドが存在している。南立面にはショールームで行われる展示の内容を表す12m×12mのスクリーンが浮かび上がる。 抽象的で白銀比を使った形態操作を主眼においたコンセプトのようです。建築家であり、大学院時代の師匠である小川晋一先生の影響を存分に受けています。ダイアグラムがコンセプチュアルですが、よく見ると、表現したいことは読み取れそうです。CADとCGを使いたてで、使えることに満足していたのかもしれません。周辺環境や土地の歴史性に関連する記述はないようです。あまり、学生の皆さんに偉そうなことは言えないことが判明しました。 白黒反転の配置図を見ると(外構・造園計画がない。。)、日本銀行福岡支店の西側の敷地でした。当時、何かが建っていたかは思い出せませんが、日銀の敷地のようにも読み取れます。現在の状況を調べたところ、既存の日本銀行福岡支店は1941年に建設された、戦後初めての鉄筋コンクリート造のルネッサンス様式の建物で、現存する日本銀行の支店の中でも福岡支店は最も古い建物とのことです。これを解体して新しい支店が建設されるとのことで、事業継続のために建物を半分づつ建設しつつ、博多駅前にある西日本シティ銀行と同様に、なんと、既存建物は解体されるとのことでした。新たに建設される建物は、景観や土地・建物の歴史に配慮した計画ですが、重厚な歴史ある既存建物が活用されずに解体されることは、非常に残念です。 当時、学生自分なりに思考したのだと思いますが、この地には見合わない、色々と検討の余地ありの成果物でした。しかしながら、今みても、自らの趣向が分かる、意匠的には嫌いではない計画でした。今の知識や技術をもって、同じ課題に取り組むならば、既存の日本銀行福岡支店を免震補強をしながら大規模改修をして外観を活かしつつ、必要面積を確保するために、増築を行うと思います。増築部分は、文化財的価値のある既存建物との明確な違いを保ちつつも、調和を図る計画とするのではと思いを巡らしています。 以上、振り返りでした。ありがとうございます。 日本銀行福岡支店の建替えについて https://www3.boj.or.jp/fukuoka/tatekae.html