11月5日、千葉工業大学の田島則行先生にお声がけいただき、学部2年生の建築計画1という授業において、zoomを使用したオンラインによる特別講義をさせていただきました。ご依頼を受けた当初は、対面方式かオンライン方式かは、講義の直前まで確定できず、状況に応じての判断とお聞きしていましたが、やはり、社会情勢を鑑み、オンライン形式での授業となりました。先生や田島研究室の大学院の学生さんなどを含め、150名もの参加をいただきました。これだけ多くの方の前での大学での講義は初めてでしたが、画面に向かっての講義でしたので、講義に対する心持ちは人数による影響はなく、自然体で講義を進めることができました。 田島先生との事前の打ち合わせでは、講義後、学生さんからの質疑はあまり出ないのではないかと言われていましたが、学生さんの建築再生に関する関心は高く、活発な議論をおこない、楽しい時間を過ごすことができました。質疑応答の内容を大別すると、以下の3点になります。 1)建築再生計画を進めるためには、構法の選定や施工の方法など、知っておいた方がよいことは何か。また、これらは設計の実務を通じて知り得たのか、さらに、学生の時に勉強しておいた方がよいことはあるか、ということでした。私が学生の時には、考えも及ばなかったことですが、前職において、師匠である青木茂先生に日頃から言われていたことを伝えました。とにかく、知識と技術を多く習得し、多様な状況に応じて手が打てるようにすることが重要であると伝えました。裏打ちされた経験も重要となりますが、とにかく、目前の学びと、多くのことに興味をもって、アンテナを張ることが大切であるともお伝えしました。自らも、日々、勉強しなければならないと思って、青木先生からの言葉を胸に活動をしています。 2)建物の計画的にも構造的にも不要な部分を解体し、構造躯体のみにした際に、対応が難しかったことは何かという質問がありました。解体しなければ既存躯体の経年劣化や前施工不良などの不確定要素に対する対応の方法について、知りたいとのことでした。これは、建物に応じて異なる状況ですが、毎回、向き合う建物ごとに、いつも、対応が難しいことばかりであるとお伝えしました。これらも、ひとつひとつ、真摯に向き合いながら、解決の方法を探るしかないのですが、一定の経験から予測可能な部分は増えてくることもあり、これらを工事着手前に、如何に整理できるかが、工事着手後にトラブルが起きないための準備となります。 3)設計の前におこなう調査などにおいて、苦労したことは何かという質問もありました。法規的に正面突破をするためには、法律と正面から向き合わなければならないのですが、現行法規だけではなく、建設当時の法規の確認をしなければならず、整理に時間がかかります。また、法に対する行政の解釈も特定行政庁ごとに見解が異なることもあり、また、建築再生に関しての法的な手続きをおこなったことがないという行政庁の方との見解のまとめや調整なども必要となる場合もあります。建築再生に関するの関係法令をしっかりと把握・理解しておく必要があるというのが実感であることをお伝えしました。設計前の調査などが建築再生の肝となる部分と感じています。 今回の講義でも、学生さんがこの講義をどのように捉えて、どのように感じたのかのレポートを後日、拝見させていただきたい旨をお伝えしております。適切な講義ができたかどうかの不安もありますが、それも含めて、レポートを楽しみにしています。建築再生設計の実務をおこないながらも、改めて、このような貴重な機会をいただいた田島則行先生と千葉工業大学には、この場を借りて、改めて、感謝とお礼を申し上げます。 それと、先日、田島先生が博士の学位を東京大学で取得されたことをお聞きしておりました。私も設計の実務をおこないながら、2足のわらじを履いて、博士の学位取得をさせていただきましたが、田島先生は、設計の実務と大学での教務を行いながら、学位を取得されております。3足のわらじをはきながらの学位取得であり、それは、想像もできないほどに、ご苦労があったのではと拝察いたします。改めて、この場を借りて、敬意を表します。