6月, 2021

 
6月 21, 2021

台東区にある谷中の歴史あるまちなみをご案内いただきました。

 6月11日、國學院大学の椎原晶子先生に、上野と日暮里の中間に位置する台東区の谷中(やなか)にある歴史的建造物群をご案内いただき、江戸時代から今に続く、日本の文化に触れることができました。木造は良いですね、心が落ち着きます。この素晴らしい谷中の良さをみなさんにもお伝えしたく、投稿いたします。  大正5年に建設された、たいおう歴史都市研究会の拠点でもある「カヤバ珈琲」でお話をお聞きした後、国登録有形文化財建造物である「市田邸」をご案内いただきました。寺町から屋敷町に変わっていった上野桜木にある市田邸は、明治40年に建設された後の今も、芸術文化活動の拠点として活用されていました。東京芸術大学の目の前にあるのですが、若い世代の方がこの建物に住みながら維持管理をされており、住んでいる方は幸せだろうなと思いました。(本日、6月21日、緊急事態宣言が解除されました。今のところ敷地内の写真の投稿はngとのことで、まん延防止等重点措置が解除されたら紹介させていただきたいと思いますが、素晴らしい建築です。)  その他にも谷中にあるたくさんの歴史ある建物の一部を視察させていただきました。昭和13年に建てられた「上野桜木あたり」は、三軒家が路地でつながり、ビアホールやパン屋さん、雑貨屋さんとして活用されていました。カヤバ珈琲で食べたたまごサンドのパンは、「あたり2」の建物に出店されている「カヤバベーカリー」のパンとのこと。もちもちしていて、とても美味しくいただきました。雰囲気はさながら、明治時代にタイムスリップしたようでした。  明治3年創業の生花問屋「花重」は、台東区の景観重要建造物として平成30年に指定されているのですが、現在、整備のための調査が進められており、歴史を紐解いている真っ最中でした(調査したい)。歴史的経緯をお聞きしましたが、建物は増築が繰り返されており、整備にはまだまだ時間がかかりそうですが、一度、軸組を解体して復元するとのことで、今から楽しみです。  築100年の銅細工の職人である大沢家の屋号である「銅菊」の古民家を再生して、大丸松坂屋の町家オフィス「未来定番研究所」として活用されていている建物も視察させていただきました。耐震補強を施しながらも、当時の雰囲気を残し、事務所として利用されている様子がとても心地良く感じました。会議室に案内されたのですが、普段の会議は会話が弾み、時間があっという間に経過してしまうそうです。このような建物が人生の多くの時間をすごす仕事場だといいですね。  また、椎原先生と一緒にご案内いただいた東京芸術大学大学院の渡邉尚恵先生にもたくさんのお話を伺いました。ご出身が、私が現在非常勤講師をしている武蔵野美術大学とのことで、ご縁や人の繋がりを感じた1日でした。私はこれまで個別の建築の再生を設計してきましたが、まちづくりは斯くあるべきと思いました。そしてまちづくりは、人のつながりでできるものだとも感じました。伴部長、渡邉先生、そして、椎原晶子先生、多くの建物をご案内いただき、日本の歴史や文化にふれることができました。誠にありがとうございました。今後とも、ご指導のご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 
6月 8, 2021

ある公立小学校の建築再生に関する実施設計のコンペの審査員を務めることになりました。

 詳細は公表されていませんので、現段階において詳しくお伝えすることができませんが、ある公立小学校を再生するための実施設計の競技(コンペ)の審査員を務めることになりました。2021年6月1日付けで委嘱を受け、6月8日に委嘱状を受領いたしました。なお、審査は公開で行われますので、その時には、詳細をお伝えできるかと思います。  購読している日経アーキテクチュアの2021年5月27日号において、「公共建築炎上」という特集が組まれており、公共建築プロジェクトのコンペや審査、案の選定に関する問題などが取り上げられているのを拝見しました。  また、同雑誌には、合わせて、大手町ビルの再生に関する記事も取り挙げられており、建築再生の注目度を感じながら記事を拝読しました。建築構法的にも興味深い内容の記事でした。  いつもは、私は設計者として設計コンペに参加する側の立場ですので、設計コンペを審査するのは初めてとなりますが、私が少なからず持つ建築再生に関する知見を活かしつつ、審査には真摯に取り組みたいと考えています。

 
6月 2, 2021

日本建築学会が発行する「建築雑誌」に寄稿した論考が掲載されました。

 早稲田大学の石田航星先生にお声がけいただきました、日本建築学会が発行する「建築雑誌」という建築の専門誌2021年6月号の「建築生産をアップデートする」という特集号に、「BIMを活用した伝統構法木造の再生技術」と題し、寄稿した論考が掲載されました。建築生産とは、建築のつくり方のことで、企画・設計・施工・維持管理を含む、建築の生産システムを意味します。その中でも、私は、宮大工さんが持つ伝統構法木造における再生技術に焦点をあてて論考しました。  驚くことに、私が設計監理に携わった建築再生の施工をおこなった宮大工さんは、BIM(3次元設計)や3次元レーザースキャナーによる3次元点群採取、さらには、VR(拡張現実)・AR(仮想現実)などの様々な最新技術を用いて、伝統構法木造に取り組んでいた。BIMとは、建築部材に情報を与えつつ、建築物をコンピューター上の3D空間で構築し、企画・設計・施工・維持管理・積算に関する情報を一元化して活用する手法のことで、簡単に言うと、3Dのモデルから平面を切り出して、図面化できる今後の建築業界に求められる共有言語のことです。  古来からの我が国における伝統技術を守りつつも、日々、アップデートされる最新技術を取り入れながら行われる建築のつくり方が、未来に引き継がれていくことを期待させる内容となっています。お手元に建築雑誌がある方は、是非、ご笑覧いただきたく思います。 以下、本文より。私の建築再生に対する姿勢を書かせていただきました。  ”既存建物に手を加え入れ、蘇らせ、未来に継承する建築再生に本格的に通り組むことは、意匠性・耐震性・耐久性・機能性・適法性・経済性などの観点から、総合的なソリューションを生み出す積極的な創造行為であると考える。最新の技術を用いた「建築再生」によって、SDGs(持続可能な開発目標)において求められる方向性と一致しているように思える。再生という行為で扱う建物は文化財だけではなく、一見、平凡に見えるビルもその対象になることが可能であり、建築再生が新築と同等の立ち位置を得る日も遠くはないのではないだろうか。”