7月22日、3年生が取り組んでいる美術館の設計課題でおこなわれた講評会をもって、今年度の前期の授業が全て終了しました。この課題は2部構成になっており、どのような美術品を展示するかの企画書を作成し、企画書に基づく設計をおこなうというものでした。想定する敷地の場所を読み解き、その場所、そのエリア、その都市だからこそ成り立つ美術館を企画します。設計前の企画を整理することの重要性を学んだのではないかと思います。 講評会には私の学部の後輩でもある、日建設計のウッドラボリーダーの大庭拓也先生を外部クリティークとしてお呼びして、講評をおこなってもらいました。非常勤講師である小栗幹雄先生と科目の代表教員である渡辺裕子先生と一緒に、学生さんと白熱した議論になったと思います。代表者に選ばれた学生さんもしっかりと発表をおこない、質疑の受け答えもできていました。今の本学の3年生はコロナの影響により、これまで2年間、入学当初からオンライン授業だったのですが、今年度から初めて対面授業を受け、戸惑いもあったと思いますが、楽しみながら対面授業を受けていたと感じました。講評後、特別講義もおこなってもらいましたが、地球に対する影響を最小限に抑える建築づくりのあり方や、森林や木材利用に関わる社会システムの話まで、学生さんたちにも分かりやすい楽しい講義でした。 また、3年生は同時に2つの演習課題を進めていました。私のクラスは建築再生の演習課題「時がつくる建築」と題して、設計課題に取り組んでいました。台東区の谷根千のまちを歩いて、興味を引いた建物を選定して歴史を紐解き、その建物の再生活用を提案するという課題なのですが、図面もないため、できる限りの調査をおこなって、間取りや構造体を想像して建築構法を学びながら既存図面を復元します。その上で活用提案をおこなうのですが、3年生は敷地が設定されていない設計課題に取り組むことが初めてだったので、最初は戸惑っていましたが、課題提出時の感想を聞くと楽しめたとのことでした。まちや建物に潜む課題や問題を見出し、それを解決するという過程は、今後の卒業設計や卒業論文などに活かされるとの思いで、この課題を設定しました。 最終日、外部クリティークとして台東区の用地・施設活用担当部の伴部長と、同区の都市づくり部地域整備第三課の反町課長に来席いただき、リアルな視点での講評をおこなっていただきました。学生さんは多くの刺激を受けたと思います。2つの課題を同時に進めることは、時間の管理が難しく、終盤は徹夜が続いた学生さんも多くいたようでしたが、達成感が得られたと感想には書いていました。建築をおこなうためには、複数の物事を同時に進めるマルチタスクの能力が求められますので、その訓練にもなったと思います。 2年生の住まいの設計、4年生の日本建築学会が主催する茶室コンペへの取り組みなど、私は前期の設計演習を4つ指導してきましたが、学生さんは、対面となった今年度からの授業を楽しみながら進めることができたのではないかと思います。 最近、コロナ第7派の影響により学内の感染者数も一気に増加していましたが、前期、非常勤講師をさせていただいている東京都立大学と武蔵野美術大学の授業も終了し、大きなトラブルもなく、何とか前期の全ての日程を終えることができました。個人的には実務との両立が大変でした。二足のわらじを履いている建築家の先生、上手なわらじの履き方を教えてください。笑。学生さんと一緒に取り組む設計課題や座学の授業は本当に楽しかったです。みなさま、どうも、ありがとうございました。