Management philosophy経営理念
建物や土地の価値を最大限に引き出し,
環境循環型社会に求められる建築の安全と安心をふまえた,
豊かな空間を創造する
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Vision建築の再生を設計するためのビジョン2・3・4・5
建築の再生を設計するための未来像は,2つの方向性に向かいながら,3つの提案により進められ,4つの建築再生が,5つのキーワードに沿って描かれる.
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>Two directions 建築の再生を設計するための2つの方向性
1)老朽化した既存建物を新築同等以上に蘇らせる長寿命建築を創造
2)建築再生や大規模改修を見据えた,維持管理の容易な新築建物を創造
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>Three Suggestion 建築の再生を設計するための3つの提案
1)建物所有者のもつ漠然とした不安を改善するための調査をおこない,解決手法を提案
2)既存建物に対して,耐震改修や建築再生を施すことにより,建物の長寿命化の解決手法を提案
3)既存建物の耐震性と遵法性を確保した上で,維持管理の容易な計画的・金融的に有効な建物を提案
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Survey3つの提案をおこなうための調査(前提条件の整理と再生可能性の検討)
3つの提案をおこなうためには調査が重要となる.既存図面と建物調査の分析から分かる設計を進める上での前提条件の整理をおこなう.さらに,前提条件を踏まえた既存建物の再生可能性における検討事項について法規的な検討・構造的な検討・計画的な検討の3項目に分類し,それぞれの項目において再生が不可能ではない,すなわち,3項目全てにおいて再生可能性があることを建物所有者が判断できる検討をおこなう.
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>Four architectural regeneration 建築の再生を設計するための4つの建築再生
耐震性の低下した建物の再生・遵法性の確保のための再生・現代のライフスタイルに合った建物の再生・文化財建物の再生
1)耐震性の低下した建物の再生
既存建物の構造調査をおこない,建物の耐震性能を把握した上で,補強計画を立案し,各建物に適した耐震補強を施すことで,意匠的にも計画的にも支障のない建物を実現する.
2)遵法性の確保のための再生
建築再生は,施される工事項目によって行政手続きの要否を判断する必要がある.この行政手続きをできる限り不要な範囲とすることで,法的な対応を避けていると思われるのが,いわゆるリフォーム工事やリノベ ーション工事であるが,確認申請を受けて検査済証を受領することは,その工事項目が現行法規により遵法性が確保されることの証明となる.
3)現代のライフスタイルに合った建物の再生
私たちは,既存建物を再生させたいと考える建物所有者が抱えている課題を明確にし,問題意識を共有しながら,課題解決に向けて再生手段の検討を進めていく必要がある.私たちは老朽化した建物に対して,常に変化するその時々のライフスタイルや,社会のニーズに応じた意匠性,設備機能,および,維持管理の容易性などの課題の解決策を提示する.
4)文化財建物の再生
高度成長期に建設された大量の既存建物の再利用を可能にする提案を行う一方,文化財建物の再利用も可能にする.文化財としての保存と,利活用の両立のバランスを保ちながら再利用計画を提案する.
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Multiple Solution methods 建築の再生を設計するための解決手法
総合的な建築再生が進まないのは,再生手法が確立されていないことに起因しており,特に,法解釈,規制や制限,再生における問題点とその解決手法が明確ではないことがあげられる.具体的には,既存建築物の再生を行う場合,建物を使いながら工事を行うための計画や,増築のように既存建物に対して付加した上で取りあいを調整する計画など,新築とは異なった設計プロセスを経る場合が多く,これらは再生設計にしかない手法である.既存建物を再生させることは,単にその建物を再生させる事だけではなく,新たな都市空間の形成に資する事にもつながり,社会の構築において意味を持つと考えることができる.
私は実務家として既存建物を再生させる設計を行ってきた.建築再生計画は,従来のリフォームや大規模修繕にとどまらない,建物一棟の全てを総合的に改修する計画である.この経験から,耐震改修計画における既存建物の総合的な性能向上を図る為の設計プロセスを実践的研究から整理し,再生手法の可能性と今後の課題について研究をおこなっている.この研究は,実践としての建築再生の設計にフィードバックされる.
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>Five keywords 建築の再生を設計するための5つのキーワード
建築再生 / 耐震改修 / 検査済証再取得 / 長寿命建築 / 環境配慮
1)建築再生
建築再生とは,既存建物の構造躯体を活用し,必要に応じて増築や用途変更などにより,用途・目的において新しい建物として再整備する手法である.大規模の模様替え,増築,用途変更,修繕,保存等を行なう計画である.既存建物の再利用をおこなうことで,新築にはない魅力を可視化させ,土地や建物の価値を最大限に引き出すことで,環境循環型社会に求められる建築の安全と安心をふまえた,豊かな空間を創造する.
2)耐震改修
地震国である日本において,補強工事によって建物の耐震性能を確保することは必要不可欠である.耐震改修とは,建築物の耐震改修の促進に関する法律において,地震に対する安全性の向上を目的として,増築,改築,修繕,模様替若しくは一部の除却又は敷地の整備をすることと定義されている.耐震補強は,単に耐震性能を向上させるだけではなく,建物の用途や目的に応じて適切に施す必要があり,平面計画上も機能を損なうことなく,意匠的にも影響のない,建物の価値が低下しない計画とする必要がある.
3)検査済証の再取得(遵法性の確保)
現行法に適合させることは,既存建物の価値を維持するためにも重要である.中古建物の流通市場においては,建物の遵法性の確保やその法適合関係の書類の有無によって建物価格が変動する.その事を建物所有者が知らずに違法物件の取引を行った場合にリスクを伴う場合がある.建物所有者は多くのリスクを抱えており,リスクをいかに減らすことができるかは建物所有者の重要な課題となる.既存建物の市場価値の向上を行うためには,検査済証の再取得がもっとも重要な事項であるといえる.既存建物を再利用する上で,遵法性を確保することは,建物所有者,建物利用者,建築関係者など全ての関係する人に対して,安心を与えることになる.
4)長寿命建築
既存建物を再生する上での問題点として,耐用年数が短い建物に対する融資の確保が難しいことがあげられる.築年数の経過した建築物の再生に融資をつけるためのプロセスを確立する必要がある.税法上の耐用年数は法律で決まっており,この年数をもとに税が決定しているが,この数字は建物があと何年持つ年数であると認識されている.しかし,実際には税法上の耐用年数を経過すると直ちに建物が崩壊することはない.すなわち,税法上の耐用年数と物理的な耐用年数とは異なる.建物所有者は,再生する建物があと何年もつのかという疑問に直面するが,物理的な耐用年数を提示することで,建物所有者は事業収支の枠組みを作ることができると考える.
5)環境配慮
持続可能な社会の構築するためには、既に存在する建築物を使い続けることこそが,資源循環型社会に求められると考えられ,持続可能な開発目標であるSDGsの2030年までに解決すべき社会課題の一つと考える.すなわち,新たに建物を建設し,量的な充実を図る時代から,質的な充実を図る時代に移行していると言える.高度経済成長期に建設された日本の既存建物は,現在,一斉に老朽化し,更新時期を迎えているが,既存ストックは,各種の要因によって改修されずに蓄積されている.この解決策としてスクラップ・アンド・ビルドが繰り返されてきたが,今後は天然資源の消費を抑制するために,循環型社会を形成していくことが求められている.