大阪ガスが運営する、NEXT21という実験集合住宅を見学させていただきました。
屋上緑化や燃料電池システム、太陽光発電などのエネルギーシステムを拝見しました。導入当初より発電効率も向上していました。敷地面積が約1500平米に対して緑化面積は約1000平米と、真冬にも関わらず、緑に囲まれた豊かな外部空間を感じました。これだけの緑化をすでに30年前から計画し、実際に生み出しているこの建物に最初から圧倒されました。屋上は、大阪城付近からあべのハルカス側に飛ぶ野鳥の休憩場所にもなっていて、生物多様性にも寄与しているとのことでした。
この実験住宅は、1993年より実験と検証が続いており、100年もつ構造躯体と、設備や内外装を適宜更新可能なシステムとなっており、段階的に改修を行う実証実験を行っているのですが、今回、2020年度に改修された3階の「自在の間」と呼ばれる住戸は、共に暮らしたい人たちが、自在に住むことができる可変性をもっていました。外部とも内部ともなる領域があり、また、バブリックにもプライベートにも可変可能な仕組みに合わせて空間の仕切り方と建具に細工がされており、換気をも考慮した自由度の高い、まさに「自在」の家であると感じました。
その他のこれまでの住まい方実験と結果の話をお聞きしましたが、特に、深尾先生がシステムを作りだした304住戸や、シーラカンス設計のシェアハウス303住戸の入居者の話など、貴重なお話をお聞きすることができたことは、ありがたいことでした。内田先生がこれからも実験をし続けていくことが重要であると言われていると、深尾先生からお聞きしましたが、それを実践されている大阪ガスにも感銘を受けました。見学後のディスカッションはそれぞれの方々の鋭い見解が飛び交い、これからの集合住宅における重要な示唆をいただきました。
我々がこの実験住宅を通じて考えなければならないことは、これからの既にある集合住宅のことです。日本にある全ての集合住宅をリセットして、ゆとりのある集合住宅に作り替えることなど不可能な社会であり、設計者として依頼を受ける建物所有者の漠然とした不安を解消するべく、高度経済成長やバブル経済を経た現状を受け止める必要があると考えます。既にある集合住宅を長く使っていくためには、この実験住宅で検証された知見を活用しながらも、それぞれの建物にあった技術を取り入れて、再生していくことが必要となります。階高や床下空間も小さい既にある集合住宅をどのように活用していくかについて、既にある建物の全てを否定するのではなく、それを受け入れつつも、どのように再生していくべきなのかを考えていかなければならないと感じました。また、同時に「集まって住う」ことを改めて自らに問うきっかけになりました。
そのようなことを思いながら見学のことを振り返りつつ、現在、進めている耐震改修をともなう集合住宅の再生のプランを帰りの新幹線の中で考えていました。
お声がけいただいた深尾先生をはじめ、大阪ガスの方々、また、ご一緒に見学をさせていただいたみなさまに感謝を申し上げます。






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