日本で唯一の不動産学部のある明海大学にて、建築再生に関する講義をさせていただきました。
8月11日、明海大学において、不動産学研究という授業の中で建築再生に関する講義をさせていただきました。teamsを使用したオンライン講義となりした。私は設計を生業とする実務家ではあるのですが、東京都立大学の角田誠教授にお声がけいただき、日本建築学会の建築計画委員会各部構法計画小委員会の委員を10年ほど努めさせていただいています。その委員の一員である明海大学の前島彩子准教授にお声がけいただき、この度、明海大学で講義をさせていただくことになりました。
明海大学では、日本で唯一の不動産学部を有し、金融学、経済学、法学、工学といった、これまで個別に研究されてきた学問を総合的に不動産学を学ぶことができます。以前、ある行政における委員会にお声がけいただき、明海大学の周藤利一教授に私の講演を拝聴いただいたことがあるのですが、その際、意見交換をさせていただいたことがありました。独立後に独立のご報告をした際、また、何かの機会でご一緒できればとの応援をいただいておりました。この度の明海大学での講義にて、講義を拝聴いただき、また、前回よりもより深い意見交換をさせていただいたことについては、感慨深く、嬉しい気持ちになりました。
講義の冒頭に、非住宅系の建物の再生プロセスの説明をおこなった後、本講義では、住宅系に関する説明を中心に行いました。不動産学部は、学部名の通り、不動産を中心とした学部であることから、建築や不動産に関する多分野にわたる専門の先生方が在籍されており、今回の講義にもご参加いただいたことで、特に、共同住宅の再生に関する法手続きや、金融に関する活発な意見交換をさせていただくことができ、私も多くの学びがありました。
今回の講義では、学部の多くの先生方が参加されての講義となりましたが、講義後のメールにて、前島先生からは、先生方からの評価をいただいているとお聞きし、不動産学の研究においても、建築の再生に関する関心の高さを感じました。近日、再開するであろう、建築学会の委員会にて、学生のみなさんの感想や、前島先生のご意見などをお聞きできればと楽しみにしています。
本講義では、不動産学研究という科目の特徴を踏まえ、意匠や設計の考え方というよりは、建築基準法第86条、すなわち、既存建築物の制限の緩和に関する条文を中心とした建築再生に関連する法律や、融資・ローンなどの金融的な話を中心としたため、学生の皆さんにはやや難解であったかもしれませんが、不動産を扱う上では切っても切れない検討事項ですので、建築再生に関するそれらの事項に関する課題を少しでも受け止めていただき、今後の活動に活かしていただけると幸いです。
オンラインでの講義ではありましたが、本講義後の質疑応答や意見交換などは、学生のみなさんや先生方の顔や表情を見ながらのやりとりとなり、先生方からは多くの貴重な示唆を頂戴するなど、楽しく議論をさせていただくことができました。
多様な質疑や意見交換でなされた議論は以下の5点などでした。1)駅から離れた場所に位置する、再生された建物の家賃変動について
2)建築再生の一般化の進まない要因として、中古市場の活性化トータルプランは国交省でも展開しているが、一般化しているとは言えない状況にあると考える。一般の方の意識の変化と、柔軟に対応する設計者の技術力の向上が必要であることについて、建物を解体して更地前提での売買や、ほぼ、土地を担保として金融機関から融資を受けるのではなく、既存建物を再利用することを前提とした計画による建築再生の一般化の促進はどのように進めていくべきか
3)地震国である我が国において、耐震補強を行うことは重要である。このことと、遵法性を確保することは、建物の再生において、最も重要な要素であり、それを前提にしなければ、市場流通やファンド化、外資系企業への売買などはできない。4)税法上の耐用年数が経過した建物に対する再生工事の融資を受けることについて
5)アフターコロナやウィズコロナを考えると、大規模な積層された床が構築される再開発や、自然換気を伴わないオフィスビルなどは見直していくべきであり、これらのことを考慮しながらも、建築の再生をおこなうことで、環境にも優しく、循環型社会の形成に寄与するのではないか。など、私の講義を飛び越えて、意見交換や議論がとても白熱したものとなりました。笑。
周藤先生から重要な示唆をいただいたこととしては、建築基準法で網羅しているのは建築計画を進める上での総論であり、個別の計画については設計者に委ねられているということでした。まさに、日頃から私の考えていることを法律の研究をされている先生から言われて、何か腑に落ちた気持ちになりました。
前職において青木茂先生が進めていた建物があと何年もつのかという社会の問いに対して、日本建築センターが建物の税法上の耐用年数に捉われない、物理的な耐用年数を定量的に評価することをプレス発表したことにより、ますます建築再生の一般化が促進するのではないかと期待しています。
やや、長文となりましたが、このような貴重な機会をいただいた前島先生には、この場を借りて、改めて、感謝とお礼を申し上げます。


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